引用:アマゾン
ビジネス版「無知の知」
愛するあなたへ。
ルーキースマートという言葉を聞いたことがあるだろうか?
ルーキーが度々ベテランより目覚ましい成果を挙げる現象のことだ。
この本では、そんなルーキースマートについて詳しく分析した本である。
例えばイノベーションはいつも新しい会社の小さなマーケットから生まれる。
それは業界に新規参入してきたその相手が、いい意味でまったくの初心者だからだ。
普通、どんなことでもベテランの方が物事をうまくこなせると思うものだろう。
だがこんな実験がある。
職歴何十年という医者と、まだ経験の浅い若い医者の診断率を調べたところ、診断ミスのパーセンテージは同じだったそうだ。
つまり、ベテランでも新米でもそれほど診断の正確さには差がないという事だ。
いや、もしかすると新人の方が難病などを見抜く率は高いかもしれない。
それは彼がルーキーだからだ。
著者の経歴
リズ・ワイズマン。ワイズマングループという企業のCEOである。この会社は世界各国のエグゼクティブを対象に、グローバルリーダーの養成に力を注ぐ会社だ。
クライアントにはアップル、フェイスブック、ディズニー、グーグル、マイクロソフト、GAPなど超有名企業ばかりが名を連ねており、これらの大企業を相手に教える彼女の力は目を見張るものがある。
Thinkers50(経営思想家50)にも選ばれたリーダーシップ分野でいま最も注目されている第一人者だ。
日本では絶対に出てこない考え方
新人がベテランより勝ることがあるという考え方は日本の風土からは絶対に出てこなかっただろう。
ルーキーがベテランより成果を出すことがあるという考え方は、転職大国のアメリカだからこそという気がする。
ルーキーがベテランより優れた成果を出すなどあまり実感が湧かないかもしれない。
だが例えば経営コンサルタントなどは会社に入って即戦力が求められる。
他にも税理士や会計士など外部からくる専門家は見方を変えれば会社にとってルーキーだ。
もちろん、純粋な新人だったとしてもベテランにはない能力を持っている。
例えば彼らは仕事をこなすノウハウがほとんどないので、他人にアドバイスを求めることが仕事となる。さらに周囲の状況や目の前の課題に最大の注意を払う。
いまの仕事に慣れたあなたは、仕事について他人のアドバイスを求めたり、目の前の課題に全力で集中して取り組んでいるだろうか?
答えがNOであるなら、あなたがルーキーの時には持っていた能力が失われつつあるかもしれない。
誰しもが失われていく能力
ルーキーの能力は、自分にノウハウが付いてくるに従って失われていく能力だ。
惰性で仕事をこなせるようになると他人の意見より自分の意見に従う方が楽になるし、慎重に行動しなくなる。
やり慣れた仕事をすることが楽なので、新しい仕事へ挑戦しにくくなる。
ある程度自分の立ち位置を固めてしまい、自分の評価を認めさせようとはりきることもない。
私もとあるソーシャルゲーム会社で働いている時、新しい環境に入ってすぐはやる気満々で積極的に動き回った。
しかし3か月もすれば最初の勢いはどこへやら寡黙な職人のように自分の仕事に集中するようになっていた。
周りの評価のされ方を考えても新人であり続けることはできないのだが、しかし新人だった時にできていたはずのことが環境に慣れたせいで出来なくなっていくのを自分で感じ取っていた。
それに気づくことで、発言を増やしたり挑戦的なスタンスをとる事で再び自分の価値を高めていくことに成功した。
まずはそれに気づくことが重要だ。
あなたが新人の頃に持っていたモノを失っているなら、再びその時のスキルを装備しなければならない。
では、具体的にどんな行動がルーキーの強みなのか?
それをこの本では解説している。
ルーキーとしての強みは4種類
著者はルーキーの強みのそれぞれの特徴に合わせて下記のような名前を付けている。
①バックパッカー
②狩猟採集民
③ファイアウォーカー
④開拓者
例えばバックパッカーの説明はこうだ。
「ルーキーはたいてい責任を背負っておらず、失うものが他と比べて比較的少ない。だから常識に定住せず、既存の非合理のパターンを新しい合理的なやり方に変えるアイデアを持ってくることができる。」
とはいえ、ルーキーには既存のやり方を変えるほどの権限も信用もないことがほとんどだ。
だがある程度の信用を築いた今のあなたなら、その時のルーキーの勘を取り戻せば多くの革新を起こせるはずだ。
ルーキーの姿勢はベテランになった時にこそ真価を発揮する。
この本から何が得られるのか?
・ベテランになるにつれ失う能力を復活させる
・自分の仕事ぶりを客観的に見直せる
この本の欠点
・当然ルーキーのすべてが優れているわけではない。
・ここに書かれている方法論を、状況に応じて使い分ける判断能力を求められる。
書評まとめ
ルーキーだった頃の仕事への態度・姿勢を再確認することで成果をあげるための本。
斬新な切り口でベテランにこそ役立ちそうだった。
評価
そこそこ