引用:アマゾン
データなんて捨てろ。
愛するあなたへ。
人を説得したい時、あなたにも自分の話を響かせたい瞬間があるだろう。
私はデータや根拠があれば説得できると思って統計データを使ったり、根拠がなければ論理的にどう正しいかを重点的に話していた。
しかし、残念なことに相手が心から納得してくれる事は少なかった。
客観的データや論理的に正しく話をしているのに、相手は私の意見を聞き入れないどころか軽んじる。
私はそんな時、相手に理解してもらえない失望感と共に「この相手はバカなのか?」と不思議に思ったものだ。
だがそう思わないとやってられないぐらい、私の話は相手に響かなかったのだ。
そんな「バカな人」たちが、本質的ではない薄っぺらい話を語る人間を信じているのを見て、私はその「相手はバカなんだ」という想いをさらに強くしていった。
だが私は、今では「バカな人」が本当はバカではない事を知っている。
なんのことはない。
私の話に説得力がなかっただけだ。
私はデータを重視するあまり、客観的な視点からの説明を徹底していた。
自分の意見やバイアスをできるだけ入れないように気を付けていた。
だが、他人を説得するためには主観的な視点から話す必要があったのだ。
このアネット・シモンズ氏の<プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える>は、客観的で優秀な人ほど陥るその「ワナ」から抜け出し、人に深いレベルで納得してもらうノウハウ本である。
著者の経歴
アネット・シモンズ。マイクロソフト、IBM、NASAなどを顧客に持つコンサルティング会社、グループ・プロセス・コンサルティングの創業者。
さまざまな組織に、いかにコラボレーションを活性化させるかを指導する一方、ビジネスシーンにおけるストーリーテリングの第一人者として、講演でも活躍。
説得力のある真実のストーリーが他人を動かす。
他人を説得させるために一番重要なことはなにか?
説得した上で、なおかつ自分のために動いてもらえるように仕向けるには、「命令」や「強要」は下策だ。
では何が一番いいのかというと、「自分自身で判断させる」こと。
自分自身で判断して肯定した時にこそ、その人はあなたの話を100%受け入れて納得したことになる。
ではそれを実現するためには?
あなたの語るストーリーが相手の心をわしづかみにするのだ。
とはいえこう言うと、「ストーリー? 会議の真っ最中に昨日見た小説の話でもしろっていうのか?」とあなたは反感を覚えるだろう。
もちろん、そんな話はやめた方がいいだろう。
だがストーリーとは何もフィクションの事だけではないのだ。
あなたの経験談や、知り合いの失敗談、たとえ話や格言でもいい。
一見関係の無さそうな話の中に含まれる「教訓」が、普遍的な真理として相手に伝わる。
そして自分で考え、あなたに同意するのだ。
例えば、私が「心構え」大事であることを誰かに教えるとしよう。
その時、「気持ちが大事なんです」とストレートに言ったところで「そうか、気持ちが重要なのか」とあなたは腑に落ちるだろうか。
だが下記のようなたとえ話ならどうだろう?
「2人の囚人が牢屋の小窓から外を眺めていた。
一人は夜空の星を。一人は泥の水たまりを。
出所した後、実は二人のうちどちらか一方だけが幸せを掴める。
さて、幸福になれるのはどちらだろう?」
ストーリーを語れば、直接言わなくてもメッセージに気付く事ができる。
逆に、客観的な事実を語ったところで相手には伝わらないのだ。
-スシの魅力を伝えるのに「冷やした生魚はおいしいです」と言ったところで-
引用:本文より
6種類のストーリーを武装せよ
あなたが何を伝えたいかで、話すストーリーも変わってくる。
それも6種類の自分なりのストーリーを持っていることで、誰でも一通り響く説得ができるようになるだろう。
それぞれのテーマに合わせて鉄板のストーリーを持っておこう。
ストーリーはその場その場に合わせて作る必要はない。
そんなにポンポンとその状況に合わせたストーリーを語れるぐらいなら、あなたはきっと話術の達人だろう。
この本を読む時間を取引先への電話にあてた方がいい。
だが他人にどうやって説明すれば響くのかわからない、自信がないあなたはこの本が役に立つはずだ。
あなたが話上手でないことをあえて仮定するなら、現実的にはいくつか鉄板のものを用意しておくのが一番手っ取り早い。
まず話し始める時に重要なのは二つ。
・「私は何者か?」
・「私はなぜこの場にいるのか?」
これは自己開示といって、まず自分がどういう人間かを相手に伝えて信用してもらう段階だ。
「話を聞く価値があるのか?」という相手の疑問は、実は話の内容の中にはない。
あなたがどういう人間か?
それが話を聞く価値があるかの判断条件にされるのだ。
そのために例えば、自分の失敗談や経験を話し、どういう教訓を学んでそれを今に活かしているか、といったようなストーリーを考える。
そして話を聞いてもらえる態勢が整えば次の四つだ。
・「ビジョンを伝える」
・「スキルを教える」
「価値観を具体化する」
・「あなたの言いたいことはわかっているというメッセージ」
この4つは相手に伝えるためのストーリーだ。
だが忘れないで欲しい。
ストーリーを通して語るべきなのは、冷たい論理ではなくあなたの感情なのだ。
人を動かすのは感情だ。
データはその補足に過ぎない。
ストーリーの中に人間的な要素を入れるように努力しよう。
ストーリーで人間的側面を表現できれば、人間には違いより共通点が多い事実を再認識させられる。
-世界で尊敬を集めている偉大な指導者が、子ども時代のテディ・ベアをまだ大事にしつづけているとわかると、その人物がそれまでより人間らしく思えて、親しみを感じやすくなる-
-「私たちは同じ人間ですものね……ところで、私にどうしてほしいとお望みですか?」-
引用:本文より
相手はあなたのことをロボットではなく、おなじ人間であって欲しいと願っているはずだ。
客観性を捨てて主観的に話すクセをつけろ
私たちはついつい、プロフェッショナルに見せようとして感情を抑え、なんでも淡々とこなそうとする。
だがそれでは誰も説得できない。
感情をさらけ出さない人間はプロらしくないし、相手にどう思われるか不安になるかもしれない。
海外の著書なので状況が違うと考える人もいるだろう。
だが最初にうまくいかなくても最後に勝てばいい。
成長しないひよこは、いつまでもひよこのままだ。
何度も失敗し、いつの間にか大多数の人間を説得できるような人材になっていれば、あなたはもう今のあなたとは決別しているだろう。
この本から何が得られるのか?
ストーリーで語って相手を説得させるコツ
ストーリーの作り方のまとめ
この本の欠点
簡単に習得できる内容ではない
書評まとめ
ビジネスを円滑にするためにはストーリーの能力が必要。
評価
そこそこ
最後まで読んでくれてありがとう。あなたが好きです。