引用:アマゾン
詐欺的自己啓発本の元祖
愛するあなたへ。
ナポレオン・ヒル氏の著書<思考は現実化する>は自己啓発系のバイブル(聖書)だ。
ある人はこの本で人生が変わり、ある人は大成功を収めた。
だが今日は真実を話そうと思う。
ナポレオン・ヒル氏は詐欺師だ。
ただし詐欺師ではあるが、ナポレオン・ヒル氏が教えている内容はまっとうだ。
まっとうなのに詐欺師?
あなたは私の言葉に疑問を抱くかもしれない。
「それは詐欺師じゃないのではないか?」と。
しかし残念ながら発言がクリーンでもナポレオン・ヒル氏が詐欺師というのは揺るがない。
なぜならナポレオン・ヒル氏が書いた「思考は現実化する」の内容は偽りなのだから。
著者の経歴
ナポレオン・ヒル。1908年に鉄鋼王アンドリュー・カーネギーに出会い、カーネギーの要請で「誰でも富を手に入れられる成功ノウハウ」を体系化し始めた。
カーネギーの尽力もあって著名な500名以上の各界成功者にインタビューをしながら、成功のノウハウをまとめる。
フランクリン・ルーズベルト、トーマス・エジソン、マハトマ・ガンジーなど多くの大富豪や政治家と親交があった。
……というのが公式のプロフィールであるが、実際には近年の調査によってすべて証拠がなく虚偽の事実であることが判明している。
特にアンドリュー・カーネギーと出会った証拠すらないというのは致命的だ。
ナポレオン・ヒル氏は、「彼の要請によって成功のノウハウをまとめた」と言っているのだから。
しかし、後年になってアンドリュー・カーネギーの日記や手紙を徹底的に調べたところ「ナポレオン・ヒル」という名前は一切出てこなかったそうだ。
「思考は現実化する」の中で、カーネギーはナポレオンのために500人以上の成功者を紹介する手紙を書いているはずなのに、である。
ナポレオンの名前を、紹介する手紙にも一切出さず、日記にも一切書かないというのはあり得るだろうか?
しかも「思考は現実化する」によれば、カーネギーはナポレオンに大きな期待を抱いていた。
-「君がこの仕事を完成したら、そして、君なら絶対に完成させることができると思うから、君を選んだのだが、私は、やっと自分の望みをかなえることができる。君に賭けているんだよ」-
引用:本文より
こんな人生の望みを託しているような言葉をナポレオンにかけておきながら、日記には一切書かないなんてあり得るだろうか?
しかもナポレオン・ヒルが「カーネギーと親交があった!」と言い出したのは、カーネギーが死んだ直後だったらしい。
死人に口なしというか、かなり山師感の漂う行動である。
ちなみに「思考は現実化する」の中の「成功の定義」はこうなっている。
-「成功とは、他人の権利を尊重し、社会正義に反することなく、自ら価値ありと認めた目標【願望】を、黄金律に従って一つひとつ実現していく過程である」-
引用:本文より
社会正義とは何なのか?
一切の交流がなかった相手と「交流があり、故人の願いを託された」と語り、作り話をいくつも話して聞かせるのが社会正義なのか?
「子供たちの貧困を救う」という名目で募金して自分のための豪邸を建てる詐欺ボランティア団体と同じだ。
言っていることとやっていることが違う。
自分で実践していない成功哲学などただのホラ話ではないか。
本当に成功者ならば自分の経験を嘘偽りなく書けばいいのに、なぜ経歴を嘘で塗り固める必要があるのか?
ちなみにナポレオン・ヒル氏は木材会社、自動車教習学校、キャンディーストアなど様々な事業を起こしたもののどれもうまくいかなかったらしい。
別に失敗したこと自体は良いのだが、その事実を語ればいいのに嘘で塗り固めた経歴を語ったことにナポレオン・ヒル氏の不誠実さを感じる。
要するに、詐欺師のナポレオン・ヒル氏が「(自分では実証できていない)まっとうな方法で成功する方法」を書いてみたのが有名な本、<思考は現実化する>なのである。
内容は異端キリスト教の教義からとっている
実は「思考は現実化する」には元ネタがある。
それは19世紀のアメリカで流行った異端宗教のニューソート主義だ。
これはキリスト教が現世での利益を追求するのを戒める教義に対する反発として生まれた。
だれだっていま生きている世界を楽しみたい。ニューソート主義はその欲求をストレートに追及しようとして、キリスト教の解釈を曲げた。
聖書の内容を従来とは違った角度から解釈しようとしたのだ。
それがキリスト教にとっては、危険な思想とされて異端扱いされたのである。
まあキリスト教ではない私には聖書の解釈を変えたと言われてもピンとこないが。
しかし、そのニューソート主義の教義内容が形を変えてビジネス書になったものが、「引き寄せの法則」だったり、「思考は現実化する」だったり、「マーフィーの法則」なのだ。
こういう自己啓発本は潜在意識だのなんだの言ってさも科学的に見せているが、本質的には宗教本なのである。だって元ネタが宗教なんだもの。
まあ、神の要素が抜けているから魔術書だろうか。
どちらにせよ思考が実現する系の自己啓発=宗教という風に捉えてもらって差し支えない。
人間は宗教を求めるようにできている
『自己啓発は怪しい宗教の教義から来ていた』という驚愕の事実(あるいは自明の理)が判明したところで、それらはすべて信じる価値のないものなのか?
詐欺師があなたからお金を巻き上げるために書いたゴミクズなんだろうか?
実はそうでもないかもしれない。
人間のDNA遺伝子の中には、「宗教を信じやすくなる遺伝子」が存在する。
この遺伝子を持っている人間は何人かに一人の割合だが、決して少なくはない。
で、宗教を信じることには心の平安だったり、精神的な安定に繋がって幸福度が上がったりする効果もある。
日本人は無宗教が多いので実感はわかないが、世界的に宗教を信仰するのは当たり前だ。
それに日本人だって墓地に行って墓を倒しまくったり、神社や寺のご神体に向けてツバを吐いたりするのはなかなか抵抗があるだろう。無意識に信仰心を抱いているのだ。
それに人間に信仰遺伝子があるという事実自体が神秘的だ。
私としては神のような「超存在」がいるのかもしれないと思っている。(厳密にいえば私はこの世界の成り立ちはシミュレーション仮説を支持している)
で、そういった「超自然現象」は色々な研究によってある程度実在は確認されている。
例えば祈りの効果なんかは調べてみると面白い。
もちろん、99%の「オカルト」はインチキなので万人にすすめるものではないけれど。
ただ実際宗教を信じると幸福感が増したり、祈りにも客観的な効果が認められている。
自己啓発が宗教由来だからといって全否定するのもちょっとどうかなという気はする。
オススメはしないが、人によっては効果がある。なぜならこれは「宗教(魔術)」だから。
「思考が現実化する」という話もまた、まったく嘘っぱちだとも私は思っていない。
物質というのは小さく分解していけば原子になるのは誰でも知っているだろう。
それをさらに小さくするとクオークなどになり、そして極限まで小さくなると「ビット」という「物質の破片」に行きつく。
で、この「ビット」というのはコンピューター言語で1ビットなどのように使われる情報単位とまったく同じものなのだ。
つまり物質を極限まで分解すると、「物質」ではなく「情報」になる。
情報というのは無形のものだという認識があるが、実は「物質(エネルギー)」なのだ。
情報=エネルギーというのは実験でも確かめられている。情報をエネルギーに変換することも可能だ。
そしてもしも人間の思考も一種のエネルギーであれば、「思考が現実化」したりといった一見非科学的なことも、もしかしたら……と思ったりするのだ。
なんだかんだ私も超自然現象とかオカルトが好きなタイプなのである。笑
ただし、それを差し引いてもオカルトにはそれほど大きな力はないと思う。
この<思考は現実化する>の元ネタのニューソートの「自分の信念や思考で世界を変えようとする技術」は、魔術だ。
だが例えあなたがミカンを目の前にして「これはリンゴだ、これはリンゴだ!」と念じ続けてもそれは絶対にミカンのままだ。
結局、オカルトの力なんてその程度である。
<思考は現実化する>はその程度の力しかないオカルトだ。
もしかしたらオカルトも極められれば凄いのかもしれない。
だが大半の人はカルト狂信者のようになって友人が離れていくのがオチだろう。
もしも、この本を実行しようと思うなら「宗教を始める」という意気込みで読み始めてもらいたい。
少なくとも私はオススメしない。
そもそもナポレオンヒルが経歴を詐称していたことがバレた時点で、この本は「魔術書」としても3流だろう。
この本から何が得られるのか?
どうすれば人を惹きつけられるか、騙せるかという視点から見た話の展開の仕方
魔術的な技術
この本の欠点
万人受けではない。
真に受けて行動しても大体失敗する。
著者の経歴、本の内容がウソだらけ。
書評まとめ
特殊な動機がない限り読まない方がいい。
同じような自己啓発ビジネスをやりたかったり、魔術を学びたい人にはオススメ。
評価
読まなくても良かったかな……。
最後まで読んでくれてありがとう。あなたが好きです。